幸福論

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

p249,-2

 私は、若い人たちが過去を生き生きと意識するようにしてやりたい。つまり、人類の未来は、どう見てもその過去よりも測り知れないくらいに長いことを鮮やかに実感するととも、私たちの住んでいる惑星がいかに小さいか、また、この惑星の上での生命がいかにたまゆらの事件であるかを、しみじみと悟るようにしてやりたい。そして、ともすれば個人の卑小さを強調しがちなこれらの事実と同時に、まったく別のひと組の事実も提出したい。すなわち、若い人たちの心に、個人が成就しうる偉大さや、個人に匹敵するほど価値あるものは広大無辺の宇宙空間のどこにもない、という知識を刻みつけるためのものである。

 ラッセルって、しっかりと考える人だな、と。こういう本を読むと、いかに自分が地に足をつけて、"しっかり"考えていないかがわかる。そりゃ、塾の面接も落ちるな、と思う。Sとか特に。
 こういう風に捉えないとダメなのだな、物事は。この宇宙が素晴らしく広いからといって、個人の存在が陳腐なものになるわけではない。どちらも大事な考え方なのだ、と。

17,6
20,7
40,6
42,-6
59,3
70,4
71,-3
233,-3
235,8

 ビジネス書の真髄みたいな本だな。いい本ではあるが、こういう本ばかり読んでいてはいけないのではないかという思いもある。
 岩波文庫の教養書はしかし、たまに読む必要がある。やはり精神が落ち着く。こうやって、じっくり物事を考えないとダメなのだ、ということに気付くことができる。『現代』という時代に生きるのに、必要とされる、求められる敏速さ、から少し離れて、「ほんとうに必要なことは何か」ということを考える機会になる。