聞く猿

ナンシー関

聞く猿 (朝日文庫)

聞く猿 (朝日文庫)

 私は、テレビの中に見つけた違和感のようなものに自分なりの屁理屈をつける作業が好きなわけであるが、それは必ずしも「正解」を出すことが目的ではない。正解など知りたくない、といっても言い。

 私には「うのでーす」と叫ぶ神田うのを、芸能界の一風景として認めるくらいの度量はあるけど、それ以上の「本当の神田うの」を消費する気はない。

 でもNHKって無菌室みたいなところだから。何から保護されているかというと、それはたぶん「つっこみ」というようなものからだと思う。これは抗議や苦情の電話が来るとか、ネクタイが派手すぎると投書がくるということではなく、「そりゃそうかもしれんけど、何いってんだよ」という視線のことである。NHKと視聴者の間には、この視線は存在しないことになっているのである。

 うむ、自分がこういったことに興味をもってるんだなってことを発見。テレビの矛盾だとか、自己顕示のいやらしさ、キャラクターと言われるものに対するつっこみだとか。虚構の中に存在する作為の中の打算を読み解く部分。基本的にいやらしい目線なんだけど、理路整然と論理が展開しているから気にならない。非常に冷静な常識人で、それに比べていかにTVが非常識なのかがわかる。
 こういう比喩に人間全体のおかしさまで目が届いていることがわかる。