しりあがり

2巻までの展開が、けっこうすごかったな、と。あれは、あの結論にいたるまで、その過程が面白かった。オチはそれほど、って。過程の段階の方が、自分の思考は自由に羽ばたける。意外と、オチを読んでしまうと、その自分が持っていたワクワク感が収斂してしまうものだ。
 この巻は、人間って、笑いを希求するものなんだなって、その姿がすごく哀れに描かれていて面白かった。しりあがり、ってこの漫画のテーマそのものを心から真剣には考えていないような気がする。自分の表現方法をいろいろ披露している、漫画の可能性を示している、テーマそのものを茶化している、そんな気がする。なんか、一方で漫画にひかれながらも、どこかでメタっぽい見方をさせる。「あぁ、こんな表現方法もあったのね、漫画」って感じさせる時がある。
 この巻でも、そうした、人間って笑いが必要だよなって、感じさせることそのものに、この媒体自体が"まさにそれである"って二面性もあるし。それじゃ、自分もこの作者に『笑い』を求めていて、それじゃ、このキタさんって、読者にも当てはまるじゃないの?って構造が生まれるし。こういう、漫画の展開ができるのは、この人特有な気がする。
 読者と漫画の関係、漫画が持つ特性、漫画が取り扱っているテーマと、漫画が取り扱っていないテーマ、読者が漫画に求めるテーマと、求めないテーマだとか。ある媒体が持つ可能性、他の媒体の中での漫画の位置づけだとかが分かっていれば、漫画の中でそれを表現できるわけだな、と。