日経新聞読みこなし隊

渋井真帆の日経新聞読みこなし隊

渋井真帆の日経新聞読みこなし隊

 「ヨコ読み」というのは、各紙面を独立したものではなく、関連付けて読む読み方。なぜ日経新聞を読むのに「ヨコ読み」が有効なのでしょうか。それは、経済は人間の欲望と行動の連鎖、つまり相互に関連し合って影響を与え合っているからです。

企業活動とは

①調達:お金を集める
②投資、運用:ヒトを雇い、工場を建てたり原材料を買ってきて商品を作る
③営業や広告をして売り上げを上げ、利益を出して国に税金を払う
④株主に配当を払って残った儲けを貯える

 自動車工場が進出すると現地で人を雇いますから、そこに大きな労働需要が発生します。これは現地の人にとってはありがたいことです。しかも自動車はトヨタや日産などの完成車メーカーだけでは作ることができません。完成車を作るためにはたくさんの部品メーカーも必要ですから、トヨタ本体だけではなく、デンソーなどの部品メーカーも工場を造ることになります。

 読むやすく、そして得るものも大きかった。
 日経って、普通に読んでいたら情報の羅列でしかなく、全然意味が分からないのだが、筆者はこれを「人間の欲望」に着目して、流れ・関係性を読めと説く。
 トヨタがペテルブルクに工場を建てることによって、プーチンの地元で大きな雇用が得られ、プーチンの人気に繋がる。これによって、プーチンと日本の繋がりも密になる。こうした捉え方がすごかった。
 ま、この本で得られた最大の教訓は、世にある膨大な情報を、自分なりに取捨選択して、自分なりに関連付けていけなくてはいけないということだ。特に経済に関する本はそうだろう。今読んでる本が、ちゃんとした本なのかどうか。経済の本って、現状を分析して、未来を予測する側面が大きいから、その本の分析と予測が、正しそうなのかどうかも、自分で見極める必要がある。そして、その本自体も、あくまで現実の大きな流れの中の一部でしかなく、実際の現実の側は、自分で読み取っていくしかない。それも、現実に流れている大きな情報の中から。ま、哲学とか文学のように、一冊を読めば、ほぼその分野の8割がたが理解できるようなもんじゃないってことだな、経済って。