日本史講義―日本人の足跡を知り、確かな展望をつかむために (らくらく入門塾)

小和田 哲男
 たまたま同じ時期に借りていた、同じ作者の本。これもかなりよかった。やっぱ、原因が知りたいんだよなぁ。歴史的背景というか、それまでの歴史の流れの中の"必然性"みたいなものが。
 筆者によれば、日本はナンバー2が政治の実権を握るという国民性があるのだそう。それが聖徳太子からはじまっていると。聖徳太子がナンバー2として政治をおこない、ナンバー1の天皇にはならなかった。理由は、政治の失敗が起きた時に、責任はナンバー2だけがとって、トップを交代させないでいいから、だと。これはなるほどなぁっと思った。たしかし、そう考えると天皇制ってよくできてるなぁっと。責任を負わないでいい、ナンバー1。安定のための存在。
 平清盛が、白河上皇の隠し子だったため、出世ができたってのも知らなかった。やっぱ、歴史って(特に日本史)って、こういう細々したことが絡んでいるんだなぁと。
 あと、江戸時代の三大改革、すべて貨幣経済の流れに逆行する政策であったというのも、この本ではじめて知った。そりゃ失敗するわな。てか、幕府とか朝廷とかの歴史って、いかにして農民から米を搾取するかっていう方法の歴史なんじゃないだろうかって思った。江戸時代の改革の中で、田沼意次だけが貨幣経済の流れに沿った改革であったのだと。そして、田沼のイメージは、田沼の失脚後に政治の座についた人物によって造られたものだってのも納得。お上が今までどおりの方法で税をとろうと思えば、そりゃ米に固執するよなぁって思う。貨幣に移動すれば、お上の権威って減少する気がするし。てか、政治家のイメージって、こうも後の人物の都合によって作られるのかって思う。それを考えると、田沼意次を冷静に貨幣経済の流れを読んだ人物だって認めた現代の歴史家ってすごいな。
 あと竜馬ってかっこよいな、と。義経を「時代がよめなかった」とか評するのもすごいなぁって思う。
 とにかく分かりやすいから、軽く見がちだけど、このわかりやすい言葉の裏には、ものすごい知識があるんだろうって思う。そう考えるとよか本です。