やまだ紫

ゆらりうす色」

抱けと望めば 揺籃にでもなろうとする 男の純情が 暖かに染みる

「欲しいものって、自分でなんとかしたいものね 「どうにもならないものには手を出さないの

男だって女だって 大人だって子供だって みんな同じなんだ
赤ん坊みたいに ドキドキ鳴る大きな胸に ゆっくり抱かれたいんだ

女がやさしいと男はすぐそれに慣れて 気づかないうちに女をふみつけて行くわ

"好き"で始まったのとちがった ゆらゆらと おちていく わたしを あの人が すくいあげたんだった
ちぎれた虫の羽が のたりとしたコールタールの沼へおちる
どうでもいいと すてながら コールタールなぞに はりつくのは いやで
さしだされた 男の手をつかんだ

何ももたない者の 淋しさや孤独は 傲慢さを かくしもつ
それにひきかえ こわせないものを うしろに負う男の 孤独はどうだ
よせくる波に 抗いもせず 激しく黙る 男の淋しさは
どこか 善良だ

「僕はこんな時 何と言ったらいいのかな...
「黙ってれば? ちょっとつらそうな顔したりして...

「面倒なのよ 男っていつも ただ座って待ってるだけで 気を使わせる」

私だって27歳の今まで清廉潔白にやってきたわけじゃないもの

恋人の後姿や 寝顔などを 息ひそめ みつめる
それが 至福であれば いいのだけれど