近藤ようこ

「美しの首」
 近藤ようこさんは人の生き様を長いスパンで見ることができるんだと思う。だから結ばれることの決まっている許嫁同士や、あの世に半分足を入れている厨子王丸なんかが描けるのだろう。
 「雨は降るとも」の場合は最後の2ページあたりで、はっきりと、この4人の関係の"総括"みたいなものを、かっちりした構図で描いている。逆算して読んでみると、すべてがここにつながるように描かれているのだと思う、安定した落ち着いた漫画だと思う。「安寿と厨子王」はもっと不安な感じだ。これといって決まったテーマが見えてくるわけではない。厨子王を愛した姫も、存在感が変わってくるあたりで、この漫画はどうなってゆくのかな、って思う。おぼろげながら見えてくるのは厨子王丸の心が座っている感じだ。あの世の存在にもビクともしない。仏ですらも利己的に利用する。ただそれが超越的なものではなくて、行く手行く手で出会う難関に対応して見えてくるものなので、読者としては不安感がつきまとう。そこが読み進めていかせる力強さ、面白さ、だと思う。