女子高生のための文章図鑑

吉田加南子


金井美恵子

 子ども時代に読んだ秀れた少年少女小説というものは、たとえばシュヴァイツァーが、バッハの練習曲について、たとえ無理矢理いやいやながら練習させられた子どもでも、一度、バッハを自分の指で弾いたことのある子どもなら、その子は一生、本当の音楽というものが何であるかを感覚としてわかることになるだろう、という意味のことを言っているが、それと同じように、一生、読むことの快楽の意味を支えている原点とさえ言い得るだろう。