夜を つけよう

u09042007-10-12

レイ・ブラッドベリ, ディロン夫妻, 今江祥智

その子はほんとにひとりぼっち、
そして、しあわせじゃなかった。
だって窓からは、夏の夜の芝生で遊んでる
子どもらが見えるんだもの。
街灯のあかりや暗がりに見えかくれする
みんなは、かけまわってて、たのしそうなんだもの。

「ううん、ちがうのよ。
 あかりを消したんじゃない。
 夜をつけただけのこと。
 夜だって、つけたり消したりできるの。
 ほかのあかりとおんなじよ。
 スイッチをおすだけのこと。」

 うむ。ぐんぐん読みすすめる。
 なんだろう。こういうのって。
 まず「夜」という世界があるんだな。未知の世界。不安の世界。自分とは違う世界。
 そうした世界に魅力を感じつつも、違和感を覚えていて、うまく踏み込めない。
 そこから、少女の出現によって、夜の世界に飛び込める。
 まさに少女が「夜の世界を教えてくれた」のだ。
 なんというか、ドップラー効果いみたいに、サイレンの音が近づくまでは不安を高まらせる、ジリジリとした雰囲気を味あわせるのだけれど、通り過ぎた瞬間に一気に流れがかわってくる。
 今までの"不安"は間違っていたのだと、教えてくれる。
 そう、見えないのではなく、見えなくして初めて見えるのだってことがわかる。
 何が怖かったのかって、見えなくて分からなかったからだ。
 だけどわかってしまうとなにも怖くない。むしろとても楽しいこと。
 スイッチを消して、はじめて見えるってのが面白いな