夜を つけよう
その子はほんとにひとりぼっち、
そして、しあわせじゃなかった。
だって窓からは、夏の夜の芝生で遊んでる
子どもらが見えるんだもの。
街灯のあかりや暗がりに見えかくれする
みんなは、かけまわってて、たのしそうなんだもの。
「ううん、ちがうのよ。
あかりを消したんじゃない。
夜をつけただけのこと。
夜だって、つけたり消したりできるの。
ほかのあかりとおんなじよ。
スイッチをおすだけのこと。」
うむ。ぐんぐん読みすすめる。
なんだろう。こういうのって。
まず「夜」という世界があるんだな。未知の世界。不安の世界。自分とは違う世界。
そうした世界に魅力を感じつつも、違和感を覚えていて、うまく踏み込めない。
そこから、少女の出現によって、夜の世界に飛び込める。
まさに少女が「夜の世界を教えてくれた」のだ。
なんというか、ドップラー効果いみたいに、サイレンの音が近づくまでは不安を高まらせる、ジリジリとした雰囲気を味あわせるのだけれど、通り過ぎた瞬間に一気に流れがかわってくる。
今までの"不安"は間違っていたのだと、教えてくれる。
そう、見えないのではなく、見えなくして初めて見えるのだってことがわかる。
何が怖かったのかって、見えなくて分からなかったからだ。
だけどわかってしまうとなにも怖くない。むしろとても楽しいこと。
スイッチを消して、はじめて見えるってのが面白いな