絵画を読む〜イコノロジー入門〜

 事実についての知識は、感受性を深めこそすれ決してそれを抹殺しない。芸術は感性のみによって制作されているのではなく、人間のもつあらゆる能力や技術や経済的関係によって生み出されるのである。もしそうであれば、それを総合的に理解しようと、かりに望むならば、鑑賞者も知性や知識や洞察力を働かせるのは当然である。...。なぜならば、美術史はそのほかの歴史とちがって、イメージによる世界の解釈であり、イメージによる世界の記録であり、さらには、イメージによってのみ表現することのできた、思考や感情の表象だからである。とはいえ、美術史は、あくまで歴史学であるから、必ず既知の事実から出発する。ある芸術作品がどのような時代に、どこで、いかなる文化情況のもとで、いかなる社会構造の元で、誰によって、いかなる技術と経済的基盤によって生み出されたかということを確実に記録することがその第一歩である。

*西洋絵画自体、宗教的テーマを元に書かれてるわけだから、それを知らないと、知ったことにはならない。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」

 盛期ルネサンスの絵画は、超自然的な表現をむしろ放逐してしまった。そのことは、一面ではこの時代の合理的精神を示しているが、多面では、信仰の安定をも示している。超自然的な表現なしに人々が理性的に神を信じることが可能であった時代ともとられるからである。

*なるほど、「受胎告知」は超合理的な宗教絵画って見ることもできるな。